オーガニックコットンで癒される ー 「Tokyo cotton village」の糸つむぎカフェ

私は、衣・食・住のなかで自分らしさを表現しやすいのは、衣類だと思います。でも、衣類=服の形にはこだわっていても、素材まではあまり気にしていませんでした。環境にも優しい「オーガニックコットン」や、フェアトレードのように生産者や生産地にも配慮した「エシカルファッション」なども最近気になり出して調べていると、自分の手で糸を生み出す、糸つむぎ体験ができるカフェを見つけました。

糸を巻き取る「スピンドル」という道具を使って、綿花から糸を生み出す糸つむぎ。ワークショップとして、「Tokyo Cotton Village(トウキョウ コットンビレッジ)」が主催するイベント、糸つむぎカフェです。

梅ヶ丘FEPカフェ外観

小田急線・梅が丘駅を降り、緑の多い閑静な住宅街を歩くこと8分ほど、今回の会場となる「梅ヶ丘FEPカフェ」があります。

会場に到着すると、「Tokyo Cotton Village」の代表冨澤拓也さんと、サポートの佐々木理恵さん。土と緑がよく似合う、日焼けした肌とさわやかな笑顔が眩しい冨澤さんですが、元は広告制作会社でバリバリ働くサラリーマンとのこと。長い黒髪が涼やかな佐々木さんは当時の同僚で、現在は「Tokyo Cotton Village」の活動を支えています。

Tokyo Cotton Villageの代表

冨澤さんは、2007年に国産綿の生産量がほぼゼロという現実を知った時の衝撃が、国産綿を育てる活動のきっかけだそうです。これまで、糸つむぎカフェを通して、3000人以上に国産綿の魅力を伝えてきた冨澤さん。なんと、糸を紡ぐ様子からその人の性格までわかるとか。そんなことってあるのだろうかと、ドキドキしながら、糸つむぎカフェの始まりです。

レクチャー風景

今回は、女性9名、男性1名の参加です。雰囲気の柔らかい女性参加者が多く、手芸好きの人が多い印象でした。

自己紹介を聞いていると、着物のリメイクをしている人や、素材から服を作りたいという人の他にも、元動物園の飼育員さんや比較文化研究者と多彩です。また、ペットの毛から糸ができないかというユニークな着眼点を持った参加者の男性も。

冨澤さんから国産綿の歴史と特徴について、簡単なレクチャーを受けました。明治以降、綿の生産を外国に移してきたことで、日本の綿産業は衰退してしまったという歴史を知りました。

さらっとした着心地が人気のオーガニックコットンの上質な生地であっても、使われる原料は、ほぼ100パーセントが発展途上国など外国産とのこと。メイド・イン・ジャパンのコットン製品は作るのが難しいという、国産綿の現状にちょっと唖然としました。

コットンのコーヒーフィルター

今では貴重になってしまった日本固有のコットンの種を、日本の土壌に撒いて作られる和棉。国の気候によっても育つ棉の質が変わってくるそうで、梅雨の時期にたっぷり水分を蓄え、暑い夏を超え育つ日本の棉は、洋綿より弾力のある綿になります。

和綿は、弾力性があることで、体と生地の間に空間が生まれ、肌に直接触れないことで、夏はさらっとして冬でも保温効果があるそうです。日本で生まれたものだからこそ、日本人の暮らしに合っているという話を聞きました。私たちの暮らしに最も合った素材が、ほとんど作られていない現状は、もったいない気もしました。

もこもこのコットン

和綿と洋綿の大きな違いは「弾力」ということで、二つを並べてみると、同じ量でもその厚みには歴然の差です。今回は、冨澤さんの活動で育てた和棉を使います。綿畑で摘まれた和棉は、ポリエステルでできた手芸用の真っ白でぼわぼわした綿とは違って、乳白色で入道雲のように、かわいいもこもこ。

「綿繰り機(わたくりき)」という木でできた年代物の装置を使って、綿と種を分けます。くるくると木製のハンドルを回すと上下に並んだ二本の棒が回転。その間に少しずつ綿を吸い込ませると、見えなかった種が手前に残り、綿だけが後ろに送られていきます。

綿繰り機

中から現れた小指の先ほどの種にはうっすらと白い綿がまとわりついていて、これだけ見ていてもかわいらしく、大切にしたい気持ちに。

この作業は冬場の乾燥した時期に、囲炉裏端で行われていたそう。秋に収穫した綿花を乾かして、農業がお休みの冬場に綿にする作業をしていたのです。季節に合わせた暮らしに思いを馳せます。

綿繰りの作業

続いて、その綿から枯葉を取り除き、繊維を均質にする「弓うち」という作業に移ります。専用の弓の、つるの部分で綿を優しくたたきます。弓では時間がかかるので、体験ではハンドカーダーという羊毛にも使われる櫛で作業します。ハンドカーダーを二枚合わせて櫛面で綿をはさみ、なでるようにすり合わせます。

弓うち作業

繊維の整った綿を割りばしでくるくる回し、小さな篠綿(しのわた)を作り下準備は完了です。ここで綿に空気を含ませることが、糸を紡ぐ際のポイントになるそう。出来上がった篠綿は、綿あめみたいにふわふわです。

糸紡ぎのレクチャー

さぁここで、ようやく待ちに待った人生初の糸紡ぎ。期待を膨らませ、念願のスピンドルを手にしました。スピンドルというのは、手で糸を紡ぐ道具。軸の長い独楽のような形で、先端に糸をひっかける切り込みがついています。静岡の間伐材から作られた木製のものが用意されていて、自然な手触りが心地よいものでした。

スピンドルに初めの糸を付けるため、まずは指だけで30センチの糸を紡ぎます。先ほど整えた篠綿を左手に持ち、少し引き出し同じ方向に縒ります。こよりを作るような感覚です。少し縒ったら、そのまますっと引き出すと自然に繊維が絡まり、糸状になって出てきます。

糸紡ぎのレクチャー_アップ

「みんな優秀です」と、ほめてくれる冨澤さんですが、私はなかなか糸が紡ぎ出せません。「綿が糸になる力は強いから、もっと引っ張っても大丈夫」という言葉をかけてもらい、エイッ、と引っ張ります。

すると、綿の中から引き出された繊維が絡まって糸になっていきます。綿が糸になる瞬間を目にして感動しました。出来上がった糸は、しっかりした強さがあって、綿とは違う形状に。しかし、それもつかの間。引きが強すぎると切れてしまう糸。悪戦苦闘してなんとか30センチメートルほどの糸を作り、次の工程へ。こんなに苦戦するとは思いませんでした。

スピンドルに巻き取り、綿側の糸を15センチメートルほど残して、鉤の部分に引っ掛けます。そして、右手の親指と人差し指でスピンドルを回転させ、よりがたまったら、先ほどのように引くと綿が糸になっていきます。できた糸にさらによりをかけたら、また巻き取ります。

できあがった糸

冨澤さん:「切れても大丈夫。失敗した糸もほどけば綿に戻りますよ」

ようやく糸つむぎの感覚がつかめたかなと思ったころ、時計はすでに2時間近く経っていました。ここまで、あっという間のようで、手元には巻き取られた糸が確実に貯まっていました。

巻き取った後は、縒りが元に戻らないように、熱湯でぐつぐつと茹でて、そうすることで、織物や編み物に加工できる糸が出来上がるそうです。

先のことをあれこれ考えるのではなく、だめでも大丈夫と思い切りやってみる気持ち、ちょっと忘れていたかもしれません。難しかった分、綿が糸に変化してスピンドルに少しずつたまっていく達成感は病みつきになりそう。無心で手を動かしながら糸に集中することで、外の世界が遮断され、自分と向き合う時間が持てるのは、糸つむぎの良さです。

Tokyo Cotton Villageの代表2

佐々木さん:「一度糸を紡ぎ始めると止まらなくなりますよ。でも、調子の悪い時は糸が切れることもあるし、その日の気分が手元にはっきり出てしまいます」

佐々木さん曰く、糸紡ぎは日替わりの気分を知るバロメーターのよう、という話も、やってみると納得します。糸がぶつぶつと切れてばかりだった私は、ほかに気になることがあって焦っていたのかもしれません。

そして、木のぬくもりが伝わるスピンドルを回す右手、柔らかく均質に下準備された綿を優しく握る左手、どちらも、自然のものを手にするホッとする感触。無機質な電化製品を操るのとは違った綿や木の優しい手触りも、気持ちを癒してくれました。心が疲れた時、スピンドルと和綿の優しい手触りが恋しくなりそう。

ふわふわのコットン

自然の恵みをその手に感じる、人間らしい暮らしを思い出すきっかけに、「Tokyo Cotton Village」の糸つむぎカフェに行ってみませんか? 大田区や横浜市の畑で定期的に開催している、綿花を育てるイベントにも興味が湧きました。

Tokyo Cotton Villageのプリント

「Tokyo Cotton Village」の糸つむぎカフェ

会期:毎月開催
会場:梅ヶ丘FEPカフェ
住所:東京都世田谷区梅丘2丁目8-13 1階
料金:3,500円(ワークショップ実費+持ち帰りスピンドル+ドリンク付)
アクセス:小田急線・梅が丘駅徒歩8分
HP:http://www.tokyocottonvillage.com/

金額など掲載の情報は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。

WRITER

ライター

こっちもおもしろい

気になるコラム