Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】Vol.7

ないた

絵本の哲学書

「なく」ことが多かった子ども時代。母親から「あなたが小さかった頃は気難しくて、よくないていたものよ」と昔話を聞きます。気が強かった私は、一度「こうだ!」と思った事が思い通りにならないと、かんしゃくをおこしてないていたといいます。

でも、いつの間にか滅多に泣かなくなった自分。いつから泣かなくなったのだろうか…。
この絵本は、そんなことを考えさせてくれる1冊だと思います。

作者、中川ひろたかさんの言葉のなかに「ひとには いろんな『なく』があって『なみだ』があります」と。ふと立ち止まって考えてみると、「なく」という行動ひとつにも「よろこび」「かなしみ」「おどろき」「いかり」「おそれ」「いたみ」。その「なく」の行動を絵本で分かりやすく、長新太さんの絵とともに表現しているのが、今回ご紹介しています「ないた」です。

私が学生時代に学んだことを少しお伝えしますね。

赤ちゃんのころ(3か月くらいまで)は快・不快のみの感情で、「なく」という行為は「不快」だから(おなかが減った、オムツが濡れて気持ちがわるいなど・・)なく。それが、成長とともに感情が分化することによって「なく」ことに意味を持ってきます。子どもは、感情のままになきます。大人になると、「この場ではないてはいけない」「この程度のことではなくべきではない」と理性がはたらき、「なく」環境、場所を選びます。それが子どもと大人の「なく」の違いでしょうね。

絵本の中では、子どもの少年の立場に立っておはなしが展開されます。
様々な場面においての「なく」が表現されている中で、とても印象深い一場面、
「そういえば、おとうさんが ないたのを みたことがない」「なんで おとなは なかないんだろう。」
私も子どもの頃そう感じていました。お父さんお母さんは、なかないものだと。

大人はそういうものだと。

でも大人になった30代になってこの絵本を読んでみると、「なく」ことの難しさを感じています。「なく」事は素直に自分の感情を表現できることだと思うのです。それは難しい反面、とても素敵な事だと思うのです。あたりかまわず「なきなさい」というのではないですが、子どもの頃のように「なきたい」と感じたときに、素直に感情のままに「なく」そんな自分でいたいな、と感じる1冊です。

ないた

作:中川ひろたか

絵:長新太

出版:金の星社

福島出身。元保育士、夢の国の住人を経て、現在「絵本カフェ ムッチーズカフェ」の店長として、オーナーむっちと共同経営中。最近の口癖「ご縁って大事よね」。 ゆでたまごが好き。お店のTwitter の中の人。

このコラムについて

Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】

絵本にはいろいろな魅力があります。よく考えてみると怖い話から、ほんとに人生に役立つ良い話まで。忘れた気持ちを思い出さしてくれる、おとなのための絵本を紹介します。