Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】Vol.4
2017.07.04
今回のご紹介する絵本は、「3びきの かわいい オオカミ」(ユージ―ン・トリビサス作、ヘレン・オクセンバリー絵、こだまともこ訳、冨山房出版)です。
この絵本、実は、ギリシャの犯罪学者が描いた絵本です。みなさんお馴染みの童話「3びきのこぶた」のパロディ絵本、子ぶたとオオカミの立場が逆転して描かれたものです。童話「3びきのこぶた」ではかわいい子ぶたが、恐いオオカミに食べられてしまうので、頑張って頑丈なお家を作るというもの。
一方この絵本は、かわいらしい3びきのオオカミがおそろしい大ブタに襲われてしまうので、頑張って頑丈なお家を作るというもの。
ストーリー的には、「なーんだ、立場逆転のただのパロディじゃない」と思いますが、この絵本の見どころは、大ブタのオオカミの家の壊し方!尋常じゃない…。
全て言ってしまうとネタバレになってしまうので、一例をあげますとダイナマイトを使ってレンガの家を壊します…、え!?ダイナマイト? 目を疑います。
この絵本は、パロディのおもしろさだけでなく、作者が言いたかった背景にも注目したいからです。「オオカミは悪者」という既存のレッテルを貼られてしまう、その固定概念を覆してみたらどうであろうかということを、考えさせられる1冊です。
「どうしていつもオオカミは悪者なんだい」「いいオオカミがいたっていいじゃないか」「本当にブタってかわいそうな存在なの」作者は問いかけているように感じます。決めつけてしまうと視野が狭く感じてしまいますね。
私はよく頭が固いといわれます。「○○だから××」「あの人はこういう人だから」決めつけはよくない、でもそう思ったほうが楽。そう無意識に判断してしまっているのかもしれません。もっと頭を柔らかくして固定概念をなくしてみたら、もっと違う世界が見えてくるのではないかと思います。そんなことを教えてくれる絵本ではないかと思うのです。
ストーリーとして、そのありえない発想がSNSで話題になった「3びきの かわいいオオカミ」。この絵本の結末は、ぜひ、ご自身の目で確かめていただきたいです。果たして、かわいいオオカミと大ブタはどうなったのか。ハッピーエンドを迎えるのか。
絵本って短い文章の中に含まれているヒントがいっぱいで、哲学的なんです。絵本を見てみる視点もこれで変わるかもしれません。
3びきの かわいい オオカミ
文:ユージーン・トリビサス
絵:ヘレン・オクセンバリー
訳:こだまともこ
出版:冨山房
このコラムについて
絵本にはいろいろな魅力があります。よく考えてみると怖い話から、ほんとに人生に役立つ良い話まで。忘れた気持ちを思い出さしてくれる、おとなのための絵本を紹介します。
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