わたしに、水タバコが話しかけてくる 水道橋シーシャカフェ「いわしくらぶ」

「東京って、一人で落ち着ける場所はあっても、人と人との交流を楽しむ社交の場が案外少ないものなんです」と、今回訪れたシーシャ(水タバコ)カフェ「いわしくらぶ」の店長磯川大地さんから聞いた開業の理由はシーシャの魅力そのものよりも、そこから広がるコミュニケーションに興味を持ったから。

お店のある水道橋は神保町にも近く、大学や専門学校が近くにあり、ビジネスマンや学生、観光客などさまざまな人が行き来する場所です。

いわしくらぶ看板

JR水道橋駅西口改札を出て神保町方面に1分ほど歩くと、チョークで描かれたシーシャのイラストが目を引く看板がひょっこり。今年の5月にオープンしたシーシャカフェ「いわしくらぶ」です。

10年前、私が友人と訪れたエジプトで、たった一度だけ吸ったことのあるエキゾチックな嗜好品、シーシャ。エジプトの首都カイロの裏路地にあった埃っぽいお店の外に椅子を並べて、人懐っこい現地のおじさん達に挟まれて吸った人生初のシーシャは、確かリンゴ味でした。

私の横で美味しそうに煙をくゆらすおじさん達は、店員さんやお客さん同士で会話を楽しみ、「じゃあ、またね」と思い思いのタイミングで席を立って帰っていきます。さながら井戸端会議のよう。「いつもの一服」を嗜むためにシーシャに人が集まり、煙とともに生まれるコミュニケーションは、カフェやレストランでは見ないラフでカジュアルなものでした。

そんなエジプトでの記憶を辿りながら、イタリアンレストランやリラクゼーションサロンが同居するコンクリート造りの雑居ビルの古くてせまい階段を登っていくと、甘いような香ばしいような煙の香りが鼻腔をくすぐります。

矢嶋ビル看板

いわしくらぶへの階段

お店に入るとのカウンターでシーシャ用の炭を焼いていた店長の磯川さんが笑顔で出迎えてくれました。こじんまりとした店内ですが、席の間に仕切りがなく、ソファやベンチ、サイドテーブルも高さのない家具を配置しているおかげでとても開放的。窓を全開にして、午後の日差しがたっぷり差し込む明るい空間です。

いわしくらぶ店内

早速、店内中央に置かれた藍色のソファに座って、シーシャを吸ってみることに。二、三十種類あるというフレーバーの中から、磯川さんもお気に入りのメロンフレーバーを用意してもらいました。

水たばこのフレーバー

メロンの写真が描かれた小さな箱から取り出したのは、シロップ漬けになった茶色の葉。これを土色のボウルと呼ばれる部分にふんわり詰めてアルミをかぶせた上に熱くなった炭をおけば準備完了です。

深く息を吸い込むとポコポコポコと、ガラスボトル内に入った水が泡立ち小気味良い音が聞こえてきます。そして口の中にふんわりと広がる甘くみずみずしいメロンの香り。ふぅっ、と息を吐き出すと煙がもくもくと出てきました。

銀と金のピカピカのシーシャと白い煙を見つめていると、ぼんやりしてしまいなんだかゆったりした瞑想タイムに突入。しばらくソファに深く座ってポコポコを楽しみます。爽やかな午後のひとときです。

水たばこの準備

中東出身の留学生がマイ・ボウル(葉っぱを詰める部分のこと)を持参して通っているそうで、その常連さんから「窓は全開にしていてほしい、屋外の風を感じながらシーシャを楽しみたい」というリクエストもあって、空調はつけないで窓を開けているそうです。

夜になると近隣の学生さんや、会社帰りの人がふらりと立ち寄って思い思いの時間を過ごしていきます。店内をぐるりと見渡すと、お店の壁に置かれた本棚が目に入りました。旅行や音楽、映画関連書籍が棚ごとにカテゴライズされています。

描かれたいわしのシルエット

ふと、床のあちこちにイワシのシルエットが描かれていることに気がつきました。「シーシャ」を連想させるキーワードをまったく含まない店名「いわしくらぶ」のロゴも手書き風のフォントで柔らかく、女性的な印象です。

いわしくらぶのオーナーさん

磯川さん:「このシーシャカフェの一番の目的は、シーシャをきっかけに、コミュニケーションを生み出す、こと。いわしって群れで行動しますよね。一人一人の考えやアイディアがたくさん集まることで、大きな力になればいいなと。この場所からいろんな人が集まって、新しいカルチャーや事業が生まれればいいなと思います」

磯川さん:「もちろん、一人でのんびりしにくるのも大歓迎です。間仕切りを作らないことで、話したい時に、誰とでも話しやすい環境を作っています」

商売をしたい、と高校を中退した磯川さん。本屋で働きながら商売について学んだ後も、俳優、音楽家と、さまざまな職業を目指して土壌を変えていきました。うまくかたちにならず、もどかしい時期もあったそうですが常に感じていたのは、支えてくれる人と場所の力。

水たばこを吸う様子

煙を吐き出す様子

磯川さんの出身地である北海道北見に2014年にオープンした1号店も、色々なイベントを企画して、刺激的な出会いがあったそうです。東京でも、今後は音楽イベントや学生とのコラボ企画を検討中とのこと。

ここに来るお客さんは20代から50代までと幅広く、趣味も多岐にわたります。憂鬱な日、何かを発散したくてモヤモヤしている時は、シーシャの煙と一緒に外に吐き出してみるのもいいかもしれません。

水たばこにチャレンジ

(写真・鈴木直道)

シーシャカフェ「いわしくらぶ 東京」

東京都千代田区三崎町2-19-4矢嶋ビル3F
TEL:090-9084-2603
営業時間:14:00-24:00
定休日:日曜日
料金:シーシャ1,500円、ワンドリンク500円〜
http://iwashimagazine.com/

編集・ライター

茨城県生まれ。旅行、スイーツ、下町大好き。きっちり計画立てるより、無計画でのサバイバル感に惹かれます。日焼けしやすく戻りにくい。最近始めたランニングによるくつ下焼けがほんのり自慢。

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