雨の日は東京地下散歩に出かけましょう 「有楽町・日比谷・銀座」

とにかく広い駅構内と、いくつもの改札口、足早に行き交う人々…。有楽町に来るたびに、私は「東京らしい風景」と思います。こうした都会の喧騒は疲れる時もあるけれど、私は結構好きです。

あの人はあんなに早足でどこへ行くんだろう、この人はどうしてこんな格好をしているんだろう。そんな風に考えることは、本を読むことや映画を観ることと同じくらい心がときめきます。

実はここには、もうひとつの顔があります。それは地下通路。東京駅から有楽町駅、日比谷駅、銀座駅は、すべて地下でつながっていて、通路の全長は4キロメートルにもなると言われています。このルート知れば、雨が多い今の時期に活用できるかもと思い、東京地下通路探検に出かけることにしました。きょうは有楽町駅の中央口がスタート地点。改札を出たら、いざ出発です。

中央口を出てすぐに「有楽町地下広場」という案内があります。そこからエスカレーターに乗って地下に吸い込まれていくと、あたりは次第に少し涼しい空気に変わり、地上の賑やかさが嘘のような静かな空間が広がります。

有楽町イトシアにつながるこの場所は、柱に沿ってベンチが並び、待ち合わせをしたり一休みしたり、皆思い思いに過ごしています。雨風や騒音、そしてまとわりつくような湿気からも逃れられて快適そうです。早速、憩いスポットを発見です。

広場を右に行くと、広々とした新しい通路が続いています。地下通路というと「コンクリートでできている無機質なもの」というイメージだけれど、ここでは天井に木材が配され、やわらかな明かりが注いでいます。品が良くて温かみがあって、開放感たっぷり。

次は一転、やや古めの地下通路へ。天井は低く、背の高い人だとひょっとしたら頭が届いてしまうのではないかと心配になるほど。蛍光灯特有のまばゆい明りとシルバーの天井、四角いタイル張りの壁に、まん丸の通気口…。幾何学的な空間が探検心をくすぐります。

銀座駅周辺のこの通路は、利用したことがあるという人も多いのではないでしょうか。私も何度も利用しているけれど、いつも目的地に向かうことしか頭になかったから、じっくり歩くのは初めてです。

進むと、鮮やかなステンドグラスが現れました。こちらは日本画家平山郁夫さんの「楽園」という作品。他にもこのあたりにはアート作品が展示されていて、淡々としがちな地下の世界に華やかさを添えています。

そんな中でひときわ異彩を放っている像があります。日本に地下鉄を導入した、「早川徳次」さんという人物のものです。「地下鉄の父」と言われるほどの偉大な方ですが、「のりつぐ」という名前からして地下鉄をつくるべき運命だったのでしょう。

早川さんは生前「いつかきっと、東京中がクモの巣のように地下鉄で張り巡らされる日が来るだろう」と語っていたそうです。地下鉄をつくるまでにたくさんの苦労を重ねたであろう早川さんに、現在の東京の様子を見せてあげられたらいいのに。そう思わずにはいられません。

地下通路、地下鉄の歴史に考えながら歩いていると、今度は思いがけないものを見つけてしまいました。内側に向かってぐるぐると渦を巻いているこれは、そう、アンモナイトです。化石です!

こうした昔の大理石には、時折化石が混ざっていることがあるとのことで、思わず床に張り付く私は側から見たら変な人ですが、そんなことはお構いなしです。

何せ化石を見つけてしまったのだから。アンモナイトといえば、2億年以上前の生物。まさか太古のロマンまで秘めているなんて、地下通路の奥深さには驚かされるばかりです。ちなみにこの日、アンモナイトだけでも数個、それ以外の貝らしいものもいくつか見つけました。どうやら銀座は高級街なだけでなく、化石スポットでもあったようです。

そろそろ地上の様子が気になり始める頃。再び有楽町方面へ向かい、3番出口から外へ出てみることにしました。顔を出すと、目の前には赤煉瓦とシーサーの姿が。ここは東京の沖縄です。

有楽町には全国のアンテナショップが連なり、「銀座わしたショップ本店」もそのひとつ。中に入ると、透き通る沖縄の海を思わせる装飾がお出迎え。一気に南国ムードが高まります。1階は食料品、地下は工芸品のフロアになっていて、沖縄の方らしきお客さんも多数。グァバやゴーヤといった沖縄野菜や、チラガーと呼ばれる豚の頭など、沖縄では一般的な食材の数々が並びます。

わしたショップを出ると、すぐ隣では大きな坂本龍馬が待ち構えています。こちらは高知のアンテナショップ「まるごと高知」。1階ではかつおや柚子など名産品を使った商品が、地下では地酒が売られているほか、高知への移住の相談も受け付けています。2階は高知の美味がいただけるレストランになっているなど、建物には高知の衣食住に関するものがぎっしり。

やはり高知らしく坂本龍馬のグッズが豊富に揃い、中には「龍馬からの恋文」と銘打ったトイレットペーパーもあります。一面に龍馬からのメッセージが印字されていて「おまんは おまんの人生じゃ 好きな事をとことんやったらえい!」という背中を押されるようなものも。これなら沈んだ気持ちも一緒に水に流してくれそうです。

アンテナショップを巡り有楽町駅に戻ってきたところで、最後は地下の喫茶店で心を落ち着かせることにします。「はまの屋パーラー」は1966年に創業した老舗。2011年に一度閉店したものの、翌年再オープンを果たし現在に至ります。お店特製のバナナジュースは、果実の旨みが詰まった濃厚な一杯。喉越しも良く、歩き疲れた体が次第に蘇ってきます。

お店の自慢はやさしい甘さの玉子が詰まったサンドゥイッチや自社焙煎のコーヒーなど、手の込んだ品々。お昼は近隣のオフィスの方が、その後はご高齢の方が昼下がりのひと時を過ごしにやってくることが多いといいます。レジの裏には「お客様チケット」という回数券のホルダーが掲げられ、足繁く通う常連さんの姿が浮かぶよう。

昭和レトロな内装は上質なだけでなく、遊び心を感じさせるものもあり、年齢を問わずリラックスできる空間です。昔はいろいろなところで見かけた星座占いルーレットもありました。早速100円玉を入れてルーレットを弾くと、勢いよくボールが回り始めます。

きれいな弧を描くボールを見ていると、その向こうに浮かぶのは地下通路でのシーンの数々。有楽町から始まり、地下鉄の歴史に触れ、はるか昔の生命の神秘をたどって…。東京の地下には、時代も場所も超えた世界が広がっていました。

銀座わしたショップ本店

東京都中央区銀座1-3-9 マルイト銀座ビル1F・B1F
TEL:03-3535-6991
営業時間:10:30-20:00
定休日:年末年始
https://www.washita.co.jp/info/

まるごと高知

東京都中央区銀座1-3-13 オーブ プレミア
TEL:ショップ03-3538-4365、レストラン03-3538-4351
営業時間:
ショップ 10:30-20:00(年中無休)
レストラン
平日  11:30-15:00 (L.O. 14:30)、17:30-23:00 (L.O. 22:00、ドリンク22:30)
土日祝 11:30-15:30 (L.O. 15:00)、17:30-22:00 (L.O.21:00、ドリンク21:30)
http://www.marugotokochi.com/index.html

はまの屋パーラー

東京都千代田区有楽町1-12-1 新有楽町ビル B1F
TEL:03-3212-7447
営業時間:月-土 9:00-18:00、日 10:00-17:00
定休日 祝日、年末年始
http://hamanoya-yurakucho.com/

ライター

静岡県生まれ。好きなものは、映画、登山、温泉、アーユルヴェーダ。地図が読めないため、町歩きはもっぱら勘がたより。旅行系の冊子やWEBをメインに執筆しています。

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