【scene 04 ― 雨の東京ウィークエンド】雨音に耳を傾けて 3つのコインランドリーで見つけた3つのストーリー

雨の日。降り続ける雨に足を止められて、なにを考えよう ——。

haletto編集部の3人が街のコインランドリーに、じぶんを見つめにでかけました。

■chapter 01-代々木「WASH&FOLD」にて

社会人になって、「自分は雨女かもしれない」と感じることが増えました。自分が担当する企画の撮影日やイベント当日は、ここ数年いつも雨。そんなに気にしていなかったけど、「本当に雨女だね」と周りの人にしみじみ言われると、ほんのちょっとだけ、悲しくなります。

ある平日のお休みの日、どこにでかけようかと楽しみに朝起きると、この日もやっぱり雨。ちょっと残念だけど、雨が降ったからおでかけしないなんてもったい無い。雨で洗濯物も乾きそうにないし、行きたかったおしゃれなコインランドリーに行ってみることにしました。

代々木駅から徒歩12分にある「WASH&FOLD」は、まるでカフェのような雰囲気の、とてもスタイリッシュなコインランドリー。店内に入ると、海外製の大きな洗濯機と乾燥機。店内にも、ヘッドフォンで音楽を聴きながら洗濯が終わるのを待っている、外国人の方の姿があります。大きな黒いランドリーバッグも、なんとなく、アメリカっぽい。

早速持ってきた衣類を洗濯機に入れ、スイッチオン。無料で借りられるダウニーの柔軟剤がとても良い香り。思わず気分も上がります。

店内の窓際のカウンターで、洗濯が終わるまで待つことにしました。コーヒーを片手に、次のお休みの計画を立てようと、持参した雑誌を開きます。

洗濯待ちの相棒は、「東京パンガイド」。学生時代にパン屋さんでアルバイトをしていたこともあり、パンが大好きな私。東京には本当にたくさん素敵なパン屋さんがあって、次回行くお店を選ぶのにも一苦労です。

美味しそうなパンの写真を眺めていると、なんだか幸せな気持ちになってきました。

ふと窓越しの空を見上げると、窓ガラスに沿って、ゆっくりとそしてふいに速く、雨粒が流れ落ちていくのが目に入ります。

パン屋さんで働いていた時に食べた、焼きたてふわふわの、あぁ、あのホテル食パンが食べたいなあ。型から出したばかりで熱々の食パンの上にバターを塗ると、パンの熱でバターが溶けて、この雨粒みたいにゆっくり下に垂れていく。しとしとと降り続く雨を見ながら、そんな光景を思い出しました。

洗濯機と乾燥機、両方合わせてかかった時間は約1時間。雨もだんだん小降りになってきました。今朝ベッドの中で雨の音が聞こえたときには、自分が雨女であることを少し恨んだのも事実。でも、洗濯機が回る軽快な音と、気持ち安らぐ柔軟剤の香りに癒されながら、美味しい想像を膨らませるこのコインランドリーでの時間は、自分にとって大切で愛おしい、心綻ぶひと時でした。

なんだか雨音だって心地よく聞こえます。

時刻は間もなく12時。そろそろお腹も空いてきました。

そうだ、美味しいパンを買って帰ろう。

(haletto編集部 折戸)

chapter 02-池袋「コインランドリー&シャワー西池袋」にて

池袋駅から徒歩15分にあるコインランドリー。赤い屋根も、軒のベンチも、まさにイメージ通りの外観です。中に入れば、ほのかな熱気と、せっけんのにおい。シャワーも奥についていて、いかにも学生の味方、という様子の小さなお店です。「池袋エリア最安」という大きな貼り紙に力強さを感じます。

「雨、洗濯」という言葉から連想するのは、大学の放課後。雨の日は、部活動で汚れたつなぎを近くのコインランドリーで洗っていました。むかしの思い出です。

今日持ってきたのは、家のちゃぶ台の下に敷いている小さなじゅうたん。わたしはコップ入りの無料石けんではなくて、自販機の箱入りを購入。さらには水洗いの倍もするお湯洗い(とはいえ、50円の倍の、100円)を選んで、洗濯スタート。38分の待ち時間です。

暇つぶしのお供は新潮文庫からでている、三浦しをんの短編集「きみはポラリス」。読みすぎてぼろぼろになった表紙が愛おしい。「恋愛」をテーマにした物語が詰めこまれ、読むたび、どんな形であれ、人を好きになりたくなります。

2、3篇を読んで、店内をうろうろ。まとまりのない本棚を横目に、この店に入っては帰っていく人たちの気配を感じます。また少し読み進めて、今度は雨を眺めつつぼんやり。

「ポラリス」というのは、北極星のこと。なぜか、このコインランドリーはむかしと変わらず、ずっとここにあるんだなと思って、雨を眺めながら、時間が止まっているような気がしました。

洗濯が終わり、蓋を開けると、石けんのにおいが立ちのぼります。なんとなくうかれる、できあがりの感覚。くるりと振り返って、今度は乾燥。大きな音をたてて回る乾燥機は、コインランドリーの醍醐味です。ばちん、と扉を閉め、今度は待つこと15分。ぐわんぐわんという音だけが、室内に響きます。

いろんな人が店の前を通り過ぎます。学生たちが、懐かしいつなぎ姿で歩いています。片手には、みんなおんなじ袋のお弁当をさげています。自転車のおじいさん、郵便配達のバイク、犬のさんぽ。

乾燥機の終了を告げるアラームが鳴って、ドラムが止まりました。扉を開けると、熱気が立ちこめます。「まだちょっと、湿ってる…」厚手のじゅうたんには、1回の乾燥では足りませんでした。今度はとなりの乾燥機をつかいます。

13分後、アラームが鳴って止まったドラムから、ほかほかのじゅうたんが登場。今度は、きちんと乾いていました。

じゅうたんを畳んでバッグにしまいます。静かになったお店を後にするのは、なんとなく寂しい気分。

傘を開いて外に出ると、涼しさが際立ちます。せっかくの洗いたてをぬらさないように前に抱えて雨の道を帰りました。次に来るのはいつでしょう。でも、どうせなら、また雨の日がいいと思いました。

(haletto編集部 百江)

chapter 03-千駄木「朝日湯 コインランドリー」にて

「あ、雨————」。家の玄関を出た途端、頭のてっぺんに落ちた雨粒に気づき傘を取りに戻りました。

今日の持ち物は、ノート、鉛筆、携帯電話。そして、IKEAのトートバックに放り込んだ大きなタオル。トートバックの中が余っているせいか、歩くたびにガシャガシャ音がします。なんだかそれも楽しいなと思いつつ、雨の中小走りで、「朝日湯のコインランドリー」へ。

着くとすぐ、洗濯機で大きなタオルを洗います。朝日湯のコインランドリーは意外なほどに静かです。上に下に円を描きながら回る洗濯物を見て、昔友達の家にいたゴールデンハムスターを思い出しました。

小腹が空いたので、洗濯機を動かしたまま、谷中銀座商店街へ向かいます。晴れの日に食べ歩きに来た商店街は、雨で壁や屋根が濡れているためなんだか違う街のようです。晴れていれば屋根から少し出たあたりで呼び込みをしている店員さんも今日はお店の奥にいて、店の前でメンチカツや田楽を食べているはずの観光客もいません。

不思議とそれが、寂しいというよりも、少しずつみんなが休んでいるように見えて。雨に降られる谷中の街は、おだやかな気持ちにさせてくれました。

「雨の日だから、みんなそれくらいがいいよね」

そんなことを思いながら、少しだけぶらぶらと散歩を楽しんだあと、コロッケを買って、朝日湯に戻りました。

まだ残る待ち時間、スタディサプリ「ENGLISH」を使って、なかなか進んでいない英語の勉強をすすめます。

ヒアリングがとにかく苦手な私はイヤホンで同じ英文を何度も聞き直します。正解、正解、不正解、正解、不正解、不正解、正解…画面越しのKumikoやAndyはとても親切ですが、なかなか全問正解できない。

気分転換に、イヤホンをはずしてコロッケを食べます。まだ少しあたたかい。甘いコロッケがなんだか幸せな気持ちにさせてくれ、同時に、ポツポツ、ザーザーという雨の音が音楽のように私の耳へ降りそそぎます。

急に、人の出入りが激しくなりました。洗濯が終わった服をかごに入れ足早に去る人。白シャツを洗濯機に入れた後、終わるまで雨の音をBGMにしてぼーっとする人。

お互いに話しかけない。お互いの生活に踏み込まない。そのほどよい距離感が心地良い。色んな人が行き交いながら、お互いに気づかないそぶりで過ごしたり、そっと静かに去って行く。数限りない一期一会の可能性を秘めながら多くの人が行きかう東京の交差点に、コインランドリーは似ています。

「ピーッ」 洗濯終了の音が鳴りました。

ドアをあけると、ふわっとやわらかい香りが広がります。タオルからは石けんのいい香り。思わずそこに顔をうずめます。

「いつもより、ふわふわな気がする。」

気分も良いし、もう一度商店街へ行くか、どこかへ遊びに行こうか。そんなことを考えたあとに、もう一度鉛筆を手に取りました。

「もうちょっとだけ、勉強していこうかな。」

しとしと。ぽつぽつ。

ザーザー。

雨はまだ止みそうにありません。

(haletto編集部 浅田)

WASH&FOLD

東京都渋谷区代々木3-12-11
アクセス:JR線「代々木」駅 徒歩約12分
営業時間: 9:00-23:00 年中無休
TEL:03-3373-1705
https://wash-fold.com/shop

コインランドリー&シャワー西池袋

東京都豊島区西池袋4-2-13
アクセス:東京メトロ有楽町線「池袋」駅 徒歩約11分 東京メトロ丸の内線「池袋」駅 徒歩約14分
営業時間: 24時間営業
https://www.facebook.com/westikebukuro/

朝日湯 コインランドリー

住所:東京都台東区谷中2-18-7
アクセス:東京メトロ千代田線「千駄木」駅 2番出口から徒歩約2分
TEL:03-3821-5849
営業時間: 8:30-23:30 年中無休 ※銭湯の営業時間とは異なる
http://www.geocities.jp/asahiyu1010/

この特集について

雨の東京ウィークエンド

毎日、雨の日が続きます。雨は夏前の潤いの源。5月の爽快さはありませんが目を閉じて耳を澄ませば、ぽつぽつと街を打つ雨音が心地よく聴こえます。 カフェの庭で雨を感じる。洗濯をしにランドリーに行く。心を静かに整えて、音楽を聴く。紫陽花を見つめ...

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