【scene 05 ― 初夏の東京ピクニック】青空の下でわがまま買い食いピクニック 「十条銀座商店街」

気持ち良く晴れた日には、予定がなくてもどこかへ出かけたくなってしまいます。平日休みの一日ともなれば、なおのことです。今日は東京三大銀座の一つ「十条銀座」をぶらりと散策することにしました。

ラッシュ時間も落ち着いた朝の10時、JR十条駅に到着しました。私にとって初めて降り立つ十条の街。どんな発見と出会いがあるのか、期待を胸に改札を抜けます。駅の北口改札を抜けると、ロータリーの向こう側に赤い文字で大きく「十条銀座」と書かれた商店街の入口が見えました。

惣菜屋に魚屋、果物屋、和菓子屋、花屋、ドラッグストア、衣料品、カフェ、食堂など、約200店舗が軒を連ね、生活に必要なものは大抵ここで揃いそう。10時半を過ぎると次々と店のシャッターが上がり、賑やかな活気に包まれます。

十条銀座は昭和52年にできた北区最大のアーケード商店街。駅前から中央通りが約380メートル、北に向かって伸び、途中で東通り、西通りが枝分かれ。屋根のある歩行者専用の商店街なので雨の日でも天候を気にせずマイペースに散策できそうです。外国人観光客の姿もあちこちで見かけました。思っていたよりも観光スポットとして周知されているようです。

駅を背にして、中央通り2番目のT字路を左に曲がると「十条仲通り商店街」に入ります。寿司屋やインドカレー屋、パン屋などの飲食店に目移りしながら歩いていると、「蒲田屋」と書かれた黄色い屋根と「おにぎり」ののぼり旗を見つけました。近づいてみると、お店のショーケースの中にたくさんの種類のおにぎりがずらりと整列しています。

奥を覗くと母親と同世代らしい女性スタッフさんがキッチンで仕込みをしています。ふと、小学校の運動会で母が握ってくれたおにぎりを思い出しました。母が作ってくれたお弁当には、三角形の大きなおにぎりが唐揚げや卵焼きの脇に主役級の存在感で並んでいたっけ。具は梅干しと、シャケ、それからわが家の定番だった味噌おにぎり。大人になった今でも母のおにぎりはたまに食べたくなる郷愁を誘う味です。おにぎりって自分が握ったものよりも人が作ったものの方が美味しく感じるのは私だけでしょうか。

ここ「蒲田屋」では梅、シャケ、おかかなどの定番の具以外にも「山ごぼう」や「ささみチーズ」、「野菜天」などのおかず系を中心に45種類のおにぎりを店頭販売しています。人気は「えび天」と「なすみそ」。お客さんが次から次へと立ち寄って、サクサクと注文していきます。

店長の添野勝利さんは二代目店主で先代のお父様と競い合うように「うまいおにぎりの具」を考え続けたところ、現在の45種類で定着したんだとか。おにぎりの値段は全て税込み110円でお財布にも嬉しい金額設定。

添野さん:「具材によっては利益が出るか出ないかのものもありますけど、同じ値段設定の方が計算もしやすいし、お客さんも選びやすくていいでしょ」

確かに均一低価格ならあれこれ試してみたくなります。優しい笑顔に隠れた男気を感じました。

朝6時半オープンという早朝営業も通勤・通学前に立ち寄りやすくて嬉しいポイントです。夕方になるとほとんど売り切れてしまい、早めに閉店することもあるそう。訪れた10時過ぎの時間帯はまだ品揃えも十分にあり、ゆっくり選ぶことができました。

今日の昼ご飯はここのおにぎりにしよう、と人気商品の「えび天」と「なすみそ」、それから定番「ごまさけ」を購入。添野さんに「外で食べるなら」と勧められた清水坂公園までの道を教えてもらい、お店を後にしました。

近くの公園に向かおうと、十条銀座の中央通りに戻る道すがら、空腹を刺激するあまじょっぱいタレの香りと、揚げ油の香りに足が止まりました。ふと道脇のお店に目をやれば、店頭に山のように並べられた揚げ物と串焼きが「美味しいよ、出来立てだよ」と私を誘います。

「焼き鳥60円」「コロッケ30円」「軟骨ボール40円」とカラフルに描かれたポップの値段を見た瞬間、おにぎりに合うおかずをこの総菜店「あい菜家」で買うことを決断。

こちらの人気商品はビッグな「チキンカツ(160円)」に「れんこんハンバーグ(120円)」。土日には800枚売れるというチキンカツ。キッチンからはシュワシュワ、ピチピチと軽快な揚げ油の音が聞こえてきます。お店の前には注文するお客さんの列が絶えず、チキンカツを始めつくねや焼き鳥、コロッケが飛ぶように売れていきます。4人のスタッフさんがフル回転で次から次へと仕込み、店頭に補充していました。

「あい菜家」のメニューは揚げ物と串焼きなどの焼き物が中心。店長の山本浩史さんから奥様のアイデアで揚げ物中心にしたというエピソードを聞きました。「揚げ物って自宅でやるの面倒だったりしませんか」と話す山本さんに思わず「その通り!」と強く同意する私。
揚げ物って美味しいけれど部屋に匂いもつくし、油ハネなどの処理など後片付けが何かと面倒くさい。こんなにリーズナブルに揚げたてを購入できるなんて あぁ、有難い、の一言に尽きます。

商品は茶色い紙袋に入れてくれるので食べ歩きのおやつにしてもいいし、まとめ買いして冷凍保存しておいてもいいかも。いずれにせよこの良心的なお値段と豊富な品揃えは十条主婦の味方に違いありません。実際、行列に並ぶお客さんのほとんどが女性でした。

ランチタイムに差し掛かると、店頭に日替わりハンバーガーが並びます。訪れたのがちょうどその仕込み時間だったのでキッチンに入って見せてもらいました。ボリューム満点のハンバーガー。マヨネーズの上に置かれた黄色い角切りの具を見つけて「サツマイモですか?」という私の問いに「いいえ、たくあんです」と答える山本さん。酢漬けのピクルスは苦手な人も多いので、たくあんに変えてみたところ好評だったそうでたくあん入りのハンバーガーが定着したそうです。日本人ならではのアイデアに驚きです。

数量限定というハンバーガーが気になりつつも、おにぎりのおかずとしてコロッケとれんこんハンバーグを購入し、公園へ向かいます。

十条銀座を抜けてまっすぐ赤羽駅方向に歩いていくと、10分もしないうちに清水坂公園に到着しました。子ども用の遊具や大きな滑り台があり、広い芝生広場の上空には鯉のぼりがゆらゆら気持ちよさそうに泳いでいます。天気も良いし、きょうは、ここで一人ピクニックをすることに。

平日のランチはコーヒー一杯でごまかしたり、お行儀が悪いけれどコンビニのパンを食べ歩きで済ませてしまうことも。芝生広場の空いているベンチに座って購入したおにぎりとおかずを並べれば、お腹の虫が騒ぎ出します。新緑の中、午後の日差しを浴びながら心穏やかに、いただきます。目の前に並んだ充実のラインナップに思わず頬が緩みます。

まずは「揚げたてだよ!」と渡されたコロッケを一口パクリ。サクサク、アツアツ。潰したジャガイモにひき肉が入ったシンプルで素朴な味わい。ジャガイモの甘みが口の中にじんわり広がります。お次はれんこんハンバーグ。中には角切りのレンコンが入っていてシャクシャクとした歯ごたえ。甘辛いタレも美味しくて、自然におにぎりに手を伸びます。

「蒲田屋」のおにぎりは手のひらサイズより一回り小さめ。中央に具がぎゅっと詰まっています。特に気に入ったのが「なすみそ」。大葉と甘い味噌がベストマッチで素揚げしたナスを引き立てていました。別添えでパックに入っていた黄色くて甘いたくあんはおにぎりの最高の相棒です。

十条銀座の人情味あふれるお店と人との出会い、そして美味しいご飯に感謝しながらあっという間に完食。青空の下で食べるご飯は「美味しい」以外にどう表現したらいいのかしら…とにかく幸せな気分です。

お腹がいっぱいになったら、なんだか眠くなって来てしまいました。ふと横のベンチを見ると、うたた寝しているサラリーマンの姿がありました。オシャレなレストランでランチもいいけれど、青空の下、ピクニック気分で食べるのも私にとっては贅沢なランチタイム。次回はお気に入りの本とピクニックシートを持って芝生でゴロンしたい。

ちらりと荷物に目をやります。バッグの中には「あい菜家」のハンバーガーが入っています。心残りがあってはいけないと、実はしっかりゲットしていた私。「数量限定」「たくあん入り」なんて聞いたら、好奇心が勝るに決まってますって。さすがにおにぎりと同時には食べられないので、夕飯時かその前のおやつか…とにかく美味しくいただきたいと思います。

 

おにぎり専門店「蒲田屋」

東京都北区上十条3-29-15

TEL 03-3906-2044

営業時間・定休日 6:30-17:00・月曜

お惣菜「あい菜家」

東京都北区十条仲原1-8-1

TEL 03-3909-2763

営業時間・定休日 11:00-20:00・不定休

http://aisaika-souzai.com/

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この特集について

初夏の東京ピクニック

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