Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】Vol.2

一回目のコラムを書くにあたって、なぜこの絵本を選んだかというと、私が絵本カフェを開く原点の絵本だからです。

おなかを空かせたあおむしが、次々と食べ物を食べていき、あおむしからさなぎ、そして蝶になるという、シンプルで分かりやすいストーリー。白のキャンバスに鮮やかな原色の色使い。独特なコラージュ(切り絵)の技法を用いて表現するのが、作者エリック・カールの特徴です。彼はその鮮やかな色彩感覚から「絵本の魔術師」とも言われています。

日本では1976年に出版され、今では30か国以上翻訳出版されているベストセラー。30代の私にとっては、生まれる前から存在するこの絵本です。40年以上が経つ今も人気があるなんて、国境や人種を越え、万人に愛されている証拠だと思います。「絵本の王道」ともいえるこの作品をご紹介するのには、こんな理由があります。

私の母は保育士でした。幼い頃は仕事で家にいないことが多い仕事です。それでも、毎日夜になると「好きな絵本1冊もっておいで」と、布団で絵本を読んでくれました。絵本好きだった母はたくさんの絵本を棚に並べてくれていましたが、私は決まって「はらぺこ あおむし」を選んできたそうです。

その頃、他の絵本ではあまり見かけなかった「しかけ絵本」に興味を持っていたのだと思います。あおむしが食べ物を次々と食べていくのに合わせて、絵本が虫食い穴のように丸く切り抜かれているのです。今では、たくさんの「しかけ絵本」が出版されていますが、当時は画期的だったのだと思います。

「はらぺこ あおむし」の人気は絵本にとどまらず、キャラクターグッズも多くつくられています。それを身につける30代女性も少なくなく、「小さい頃この絵本大好きだったんだよね」と懐かしく思う方、お子さんに向けのグッズを我が子にと購入される方も多いのではないのでしょうか。

幼い頃からの私の絵本好きは大学になっても変わらず、卒業論文は「はらぺこ あおむし」の作者「エリック・カールの魅力について」というテーマでした。大人になった自分が、もう一度「絵本」に立ち戻った時、どんな感情になるのだろう。子どもの頃には考えなかった視点から考えてみたのです。論文を通して、作者のバックグランドや絵本の技法などを調べていくうち、幼い頃に感じたものとは違う、作者の人柄だったり、細かい技法だったりをあらためて知り、「だからこの絵本がすき」と思うようになりました。

私の人生を通して、読み返すことの多かった「はらぺこあおむし」。まだ読んだことのない人も、新しい発見ができる一冊になるかもしれません。何かを感じることができる絵本かもしれません。私にとってこの絵本は今の原点になる大切な作品です。

あなたにも、絵本に関わらず人生を変える1冊があります。そんな絵本にまだ出会ったことのないあなた、ゆっくりと探してみてはいかがですか。

 

はらぺこあおむし

作:エリック・カール
訳:もりひさし
出版:偕成社

福島県出身。元保育士、夢の国の住人を経て現在、高円寺にある「絵本カフェ ムッチーズカフェ」の店長として、オーナーむっちと共同経営中。絵本専門士として、店内に置く絵本を選書しています。口癖は「ご縁って大事よね~」。ゆでたまごが好き。お店のTwitter の中の人。

このコラムについて

Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】

絵本にはいろいろな魅力があります。よく考えてみると怖い話から、ほんとに人生に役立つ良い話まで。忘れた気持ちを思い出さしてくれる、おとなのための絵本を紹介します。

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