テーラーの面影残す「(元)鶴谷洋服店」から、お向かいの本格コーヒー「神田伯剌西爾」へ向かう【神保町】

路地にある喫茶店など、昭和の面影を残す神保町は懐かしい気分になる私の好きな場所。その中で通りかかるたびに、気になっていたお店があります。表に大きく書かれた鶴谷洋服店という店名。その横に少し小さく「元」とついた不思議なお店が、(元)鶴谷洋服店です。平日は開店していないようで、シャッターについている小さな案内板には「金・土・日・祝日の午後営業いたします。」と書かれていました。

神保町A7番出口に到着。路地を抜けると目の前にお店がありました。平日に通りかかることが多かったので、(元)鶴谷洋服店が開いているのが貴重な感じ。ドキドキしながらお店をのぞくと、きちっとしたスーツ姿の男性と、おしゃれな帽子にレトロなブラウスがしっくりくる女性が迎えてくれました。お二人がこちらのお店を営んでいる店主夫婦です。

店内を見て、商品についての話を聞くほど、ただのレトロな雑貨店では終わらない、素敵なお店だな、と感じました。

まずはお店の歴史について、話を聞きました。現在の店主夫婦の奥さん方の親戚が、この場所で戦前から3代続くテーラーを営んでいたそうです。3代目店主の伯父さんが、7年前に亡くなり、表の鶴谷洋服店という店名の横に小さく「元」という字を足して営業しています。お店が空いてしまったときに、仕立て屋はできないけれどこの場所でお店を続けたいといまの形になったそうです。

洋服屋は既製服を売るお店がほとんどですが、昭和初期、自分のぴったり合った服を採寸して作ってもらう仕立て屋のことを指していたということ。出版社なども多いこの町で、紳士向けの仕立て屋として、背広をつくり、お客様を送り出してきた歴史のあるお店です。

現在は(元)鶴谷洋服店ではありますが、店内を見てみると、船の舵や、外国の紳士や婦人の描かれた飾りが目を引きます。その由来は、鶴谷洋品店が輸入物の舶来生地を扱っていたことだとか。昭和当時、外国製のというのは最先端のファッション。学生にとって、憧れのお店だったのではないでしょうか。

店頭のガラスケースには紳士服の生地の巻物が飾られていました。渋くてかっこいいダークな色合いに、ハンサムなテーラーの雰囲気が感じられます。その巻物が特製のミニチュア版になって、お店の番台にディスプレイされているのも発見。テーラーの時代にも愛着を感じている様子が伝わり、(元)鶴谷洋服店の二人にほんわかします。

紳士服の生地の中で、羅紗は羊毛でできていたことから、羊のオブジェも所々に飾られています。ダークなカラーの生地が並ぶ中に羊の姿が印象的だったと、思い出に残っているそうです。表のショーウィンドーには、陶器でできた羊がいました。

そのショーウィンドーには、テーラーで使われた歴代のアイロンも飾られています。中には、炭を入れていた時代のアイロンも見つかりました。鶴谷洋服店の時代につながるような空気感がところどころ、感じられます。

店内には、テーラー時代の羅紗を使ったブックカバーやがま口などのオリジナル商品も見られます。いくつかある中で、特に気になったのは、帽子。その名も羅紗ポー。

シャポーというのはフランス語で帽子のこと。舶来生地にプライドを持っていたテーラーの主人の想い入れもここに生かされていると感じました。

羅紗ポーは、惜しまれながらも2015年に閉店した、裏原宿の文化屋雑貨店の型紙からつくられているそう。実際に製作しているのも内田ミシンという、文化屋雑貨店の「世の中に無いものを探し、探してなければ作り出す」という精神を引き継いだブランドだということです。

現在は縁あって、文化屋雑貨店の正規品を置くことになったそう。大きなキラキラの目にまつ毛がパチパチした昭和の塗り絵で有名なイラスト、蔦屋喜一のきいちシリーズのポーチなども置かれています。

 

一つ一つ手張りで作られているというヒョウ柄のとっくりとお猪口セットや、古いスカーフの柄にあったロシア風の女の子を転写して作られた立体的なポーチなど、一つ一つにストーリーを感じる文化屋雑貨店の商品コーナー。

これは何だろうと聞いてみると、思いもよらないストーリーが隠れた品物が見つかる文化屋雑貨店の正規品を見せてもらいながら、お店の人と盛り上がります。レトロでかわいいというだけではなく、インスピレーションを刺激される品揃えに、古くからある場所に新しい価値を見出したような、そんな不思議を感じます。

文化屋雑貨店の精神を受け継ぐ内田ミシンさんと、鶴谷洋服店とのつながりを感じる羅紗の布が出会った、羅紗ポー。どちらも誰かの意思を繋ごうとしているようで、帽子自体にも、奥行きのあるストーリーが見える気がしました。

もちろん、レトロな琺瑯鍋や古着のブラウスなど、私好みの品物も商品もたくさんあり、店内の品物を見ているだけで幸せな時間。雑貨屋にいくと、ついつい長居してしまう私の悪い癖がこのお店でも出てしまいました。

歴史や想いを感じる品物に触れ、(元)鶴谷洋服店で楽しんだ後は、お向かいの神田伯剌西爾で休憩を。少し前、喫茶店なのに囲炉裏があるという写真を見て足を踏み入れ、コーヒーのおいしさに感動した喫茶店。細い階段を下りて入り口を入ると、左右に通路が分かれて禁煙席と喫煙席へと続いている細長い造りです。

左手に進むとそこは喫煙席、お目当ての囲炉裏席はこちらにあります。囲炉裏席以外にも、動いてると思いきや止まっている振り子時計のある禁煙席も、まるで秘密の話ができそうな雰囲気です。

今回は、神田ぶれんどと、マスターおすすめの大泉学園にあるケーキショップ「菓譜え」から仕入れているというコニャックショコラのケーキセットを注文。ビターなのにさっぱりしているチョコレートクリームがあと引きくおいしさ。甘すぎるケーキが苦手な私でも、ペロリと食べてしまいます。コニャックショコラのほかにも、かぼちゃのタルトやシフォンケーキなども気になってきます。

自家焙煎のコーヒー豆も販売しています。家でこの味が飲めたらなと、マスターがコーヒーを入れる姿をじっと見つめてみました。お湯をカップに移したりして温度を丁寧に操りながら、手早くお湯を注ぐところと、じっくり落ちるのを待つところの緩急の差もまさにプロの技。

大満足で神田伯剌西爾を後にしました。

いつ来ても、新しい発見と魅力がある神保町は、落ち着いた街中にたくさんの「発見」が隠されているタイムカプセルのよう。気づけば時間も結構経っていて驚きます。神保町がさらに好きになる休日になりました。

(元)鶴谷洋服店

千代田区神田神保町1丁目3

アクセス 地下鉄神保町A7出口より徒歩3分

営業 金・土・日・祝日の午後

http://tsuruyayoufukuten.blog.fc2.com/

神田伯剌西爾

東京都千代田区神田神保町1丁目7 小宮山ビル地下1階

営業 平日11:00-21:00/日・祝11:00~19:00

アクセス 東京メトロ/都営線神保町駅A7出口 徒歩3分

http://brazil.nobody.jp/

ライター

東京都生まれ。休日は近場の町探検へでかけます。気になった喫茶店にふらっと入り一息つくのが至福の時。出かけた先でお土産におやつを買うのが楽しみ。

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