知らない一冊にであう店 ― 本のにほいのしない本屋「神楽坂モノガタリ」

石畳が敷き詰められた小道やオープンテラスの小さなお店など、フランス・パリの街を彷彿とさせる要素が多い神楽坂。雰囲気そのものが洗練されており、おしゃれな街は、歩くだけでも楽しい気分になれます。そんな街の一角にある「本のにほいのしない本屋・神楽坂モノガタリ」。

ちょっぴり風変わりな名前のこの本屋さんには、いったいどんな空間が広がっているのでしょうか。お店の外に置かれた小さな看板には、ハンドドリップで淹れるコーヒーの写真も。どうやら本棚と並んでカフェスペースも設置されており、おいしいコーヒーがいただけるようです。
本とおいしいコーヒーは、私のくつろぎの時間に欠かせない組み合わせ。お店に行く前からもう、自分好みのテーマに期待しつつ、「本のにほいのしない本屋・神楽坂モノガタリ」に足を運びました。

神楽坂駅

東京メトロ・神楽坂駅の地上に出ると、洗練された美しい街並みが目に飛び込んできました。天気がよく、春先にしては暖かいこともあってかにぎわう神楽坂通り。心なしかどの人もリラックスし、歩くことそのものを楽しんでいるように見えました。

「本のにほいのしない本屋」があるのは、神楽坂駅1番出口のすぐ目の前。歩道に小さな看板が出ているため、すぐにお店を見つけることができました。

「本のにほいのしない本屋」への階段

お店は建物の2階にあるため、入口へと続く階段を登ります。はっきりとした白と青で構成された階段はおしゃれで、なおかつかわいらしい雰囲気。階段を登るにつれて、期待も膨らんでいきます。

本のにほいのしない本屋外観

たどり着いたのは、ガラス張りの自動ドア。向こう側には、暖色系のライトで照らされた本棚がいくつか見えます。すっきりとしつつも、温かみを感じさせる空間です。

吸い込まれるように店内に足を踏み入れると、コーヒーの香りが鼻をくすぐります。周囲を見回すとたくさんの本にくわえ、広々としたカフェスペースが目に入りました。

本のにほいのしない本屋の店内

また、スペースの一角には小さなキッチンがあり、バリスタがコーヒーを淹れています。ブックスペースとカフェスペースがおおよそ半々で設けられていることもあるのでしょう、コーヒーショップの雰囲気も強く感じさせます。

平日の昼間ということもあり、店内にいるお客さんの数はまばら。けれども静かに談笑したり、本に読みふけったりと、どの人も思い思いに自分の時間を楽しんでいるのが分かりました。

本のにほいのしない本屋の店内2

早速、お店ご自慢のコーヒーを一杯注文。バリスタさんが目の前でコーヒーを淹れてくれますが、引き豆にお湯を注ぐたびにコーヒーの香ばしい香りが漂ってきてたまりません。また、聞くところによると、こちらのバリスタさんはリーガロイヤルホテルの喫茶室で勤めていたこともあるベテランなのだそう。手馴れた手つきで、丁寧に淹れていきます。

コーヒー

ドリンクメニューはコーヒーだけでなく、紅茶やワイン、ビールなど。これからの季節はテラス席でビールをいただきながら読書、というのもいいかもしれませんね。また、会社帰りなどに立ち寄り、一杯呑みながら読書するのもオススメです。

小ぶりなカップに注がれたコーヒーは、上品な見た目ながらも香り高さは抜群。一口含めば、上質なコーヒーの香りが口いっぱいに広がります。また、陽の光が穏やかにふり注ぐカフェスペースは、心地よい開放感。そんな空間の雰囲気もあいまってか、席に腰かけてコーヒーの味と香りを楽しむうちに、どんどん体の力が抜けていくのが分かります。

コーヒーのアップ

こちらを運営する株式会社フォーネット社の代表・永松さんに、お店のコンセプトについてお伺いしました。

一番気になる「本のにほいのしない本屋」という店名について。本がちゃんと置かれているのに、なぜ「本の匂いがしない」と表現するのでしょう。
永松さん:「本だけでなく、コーヒーや軽食も楽しんでいただける空間にしたいと思ったからです」

本のにほいのしない本屋のフード

「ここのお店を、本を売っているだけの、ごく一般的な書店にはしたくありませんでした。本が置かれている空間や本を読む時間なども、積極的に楽しむスタイルをご提案できればと考えたんです」

電子書籍が一般的になった現代は、紙の書籍を扱う本屋にとっては厳しい時代。あらゆる情報が携帯端末で簡単に入手できるため、読書の習慣がある人は減少傾向にあり、街の書店は小さい店舗を中心に次々と廃業しているそうです。「本のある時間や空間も含め、本っていいな、と感じる人が多ければ多いほど、本の文化が絶えることはないだろうと。本が好きな人を少しでも増やしていきたい、という狙いがあります」

「本のにほいのしない本屋」の書棚

本棚には、絵本や写真集、小説など、幅広いジャンルの本が並びます。作家やジャンルごとには置かれていないので、絵本の隣りに実用書が、なんていうことも。人気作家の新作など流行の本よりも、海外作家による哲学書など、ほかの本屋ではなかなか見つからない本が目につきます。少し歩き回るだけで、予想もしていなかった本と出会えました。

「本のにほいのしない本屋」の書棚2

本棚を眺めていると、普段手に取ることのないような本にもなんとなく手が伸びてしまいます。この「なんとなく」が、もしかしたら自分の中の新ジャンル開拓のきっかけになるのかも。好奇心が刺激される空間です。

「本のにほいのしない本屋」の平積み

専任のコーディネーターさんが選んだ本が置かれていて「本棚にはそれぞれ、 “核”となるような本が平置きで積まれていたり、手書きのポップが添えられていたりと控えめに主張します。その“核”と緩やかな繋がりがある本が選ばれ、一つの本棚に置かれているんです」

また、気になったのは、店内奥にある“秘密の隠れ場所”のような小さなスペース。

「本のにほいのしない本屋」の店内3

そこにも他のスペース同様、様々な本が並んでいますが、アーチ状の小さな入り口が設けられているため、カフェスペースからはほとんど見えません。人目を気にせず、本選びや読書に集中できます。「少し唐突なアイディアかもしれませんが、あのスペースは“人の心の中”をイメージして作りました(笑)。主に哲学書や人生の指南書などが置かれているので、例えば人生に迷いを感じた時、このスペースに入ってみてもらいたい。道しるべになるような本と出会えるかもしれません」

「本のにほいのしない本屋」の店内4

何千冊もの本が取り揃う巨大書店でもない、一つのジャンルに特化させたマニアが集う場所でもない。おいしいコーヒーと小休憩を求めて、ふらりと訪れたところに、意外な出会いがあった……「そういえば、こういう本を読んでみたかった」と本の方から気づきを与えてくれる、そんなシチュエーションが期待できそうな書店です。

「本のにほいのしない本屋」の店内5

ぜひ時間に余裕を持って来てみてください。店内の、静かで落ち着いた空気感に誘われるようにカフェスペースに腰をおろし、そしてそのまま手にした本に読みふける、という予定していなかった行動をとる人も多いはずです。

コーヒーの香りただよう「本のにほいのしない本屋・神楽坂モノガタリ」。本好きによって考えつくされた「本を読むための空間」が、ここにはあります。本屋としてのイメージを抑えたお店づくりが、本を楽しみたい人へ、最高の出会いを与えてくれます。ひさびさに本を読みたくなった、新しい本と出あいたい、そんなあなたこそ、ぜひ一度足を運んでほしいお店です。

本のにほいのしない本屋・神楽坂モノガタリ

東京都新宿区神楽坂6-43 K’s Place 2F

TEL 03-3266-0517

営業時間・定休 (平日)12:00~21:00、(土日祝)11:00~20:00・月曜

http://www.honnonihohi.jp/index.html

ライター

千葉県生まれ。食べ歩きとお酒、島巡りが好きです。ワインと日本酒の奥深さに感動し最近スクールに足を運んだりするようになりました。

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