【scene 08-旅する東京ライフ】きょうは、相撲女子になる日 「両国国技館・相撲博物館」

電車に乗って目指すは両国。電車はそれほど混雑していません。両国駅に降り立つと、そこにはお相撲の世界が広がっていました。改札内のコンコースには床と天井に土俵を模した装飾がされていて、さすがは両国だなあ、なんて気分が盛り上がります。

歴代横綱の手形と説明パネルも展示されていて、その横には横綱の身長まで壁に印がされていました。思わずその横に並んで、1人背比べをしてみたり。どの横綱もとても大きい人ばかりだな、と実感。

さあ、とうとう来ました両国。東北は仙台出身の私は、子供のころからお相撲というものに興味を持っていました。とはいっても、別段どの力士がお気に入りだとか、テレビ放送を欠かさず見るとか、そういうレベルではないのですが。

ただ漠然と、東京の両国へ行けばお相撲さんに会えるのではないか、といった感じの、自分の地元には無かったものへのあこがれといえばいいんでしょうか。今回の旅でこの両国を選んだのも、せっかく東京で働いているのに一度も足を踏み入れたことがないな、ということに気が付いてしまったから。

両国駅の改札を出ると、もうそこから相撲の町が広がっています。ちょうど昼時でお腹も減ってきていたので、JR総武線両国駅西口直結の「両国・江戸NOREN」を覗いてみることにしました。

ここにも土俵が作られていて、「粋な江戸の食文化を楽しむ」をコンセプトにした12店舗の和食のお店が勢ぞろいしていました。ここで軽く昼食を取ると、いよいよ目的地の「両国国技館」へと向かうことに。

せっかくの機会だし、ここは生のお相撲を観戦と行きたかったけれど、残念ながら今の季節はやっていませんでした。残念だけれどお相撲を観戦するのはまたの機会にして、今回は同じ国技館の中にある「相撲博物館」へ行ってみることにしました。

「相撲博物館」はJR総武線・両国駅西口から徒歩で2分ほど。東京場所開催日以外は国技館の正面入り口は閉鎖されているので、その手前にいる警備員さんのところから中に入るという流れです。警備員さんになんて言おうかとちょっとドキドキしながら近づいていくと、「博物館ですか?」と笑顔が返ってきたのであっという間に緊張もほぐれました。

基本無料で入れますが、場所中は観戦チケットを持っている人しか中に入れないので注意が必要です。今回は、公益財団法人日本相撲協会相撲博物館の土屋喜敬さんにご案内していただきました。

「相撲博物館」は1954年9月に、蔵前国技館の完成と同時に開館したもので、1985年1月に、「両国国技館」が開館したことに伴い、博物館も両国へ移転して来たそうです。

博物館の広さはだいたい畳90枚くらい。

「年6回本場所がございますので、博物館の展示も年6回全部入れ替えをしています」と土屋さん。

通常は博物館に行くと、常設展と企画展がありますが、ここは常に企画展をやっている状態になるそうです。一部横綱の肖像画が常設ですが、それ以外は全部毎回入れ替えになっています。

一言で相撲と言ってもいろんな見方があるので、毎回の展示にテーマが決められています。例えばある一人の横綱の特集をしたり、江戸時代の相撲を特集をしたりと視点を変えて、色々なテーマで展示していくということです。

今回はどんなテーマかというと、力士の手形の特集が展示されていました。江戸時代からの名だたる力士や、体の大きかった力士の手形を順次紹介しているもので、手形だけを集めた企画は相撲博物館としても初めての展示になります。

現在力士は600人から650人ほどいるそうで、その中の上位70人が十両以上の関取になるのだそうです。関取になると一人前の力士として髷をイチョウの形に結うことが許され、関取の証になります。関取の髷は大銀杏と呼ばれています。

幕下以下の人はただ結んであるちょん髷ということは、言われるまで気が付きませんでした。いわれてみれば写真の関取や横綱の曲げは綺麗にイチョウの葉の形。こういう所を知っていると、お相撲を楽しむ視点もかわってくるんだろうな、と思いました。知らなかったことがもう一つ。手形を押したりサインをしたりできるのは十両以上に限られていて、手形を押すというのは関取としてのシンボルになるということでした。

それにしても手形の特集というだけあって、博物館の中には歴代の横綱の手形など数々の手形が所狭しと並べられていました。手形の色は赤いものと黒いものの2色あったのですが、「博物館的には赤で押してもらうより黒で押してもらった方が嬉しいんです」と土屋さん。

赤い色は時間が経つと色が飛んでしまうという理由からなのだけど、黒い色は黒星とにつながる色ということで、縁起を担いで使わない人が多いそうなんです。

力士の手形は家の入り口に貼って魔除けや泥棒避けに使われたり、江戸時代には調度品という形で床の間などにかけられていたそうです。今でも飲み屋さんや和食のお店なんかで店内に貼られているのを見ることがあるけれど、あの手形に魔除けの意味があったとは知りませんでした。

年6回入れ替えられる展示ですが、次の5月場所は新横綱が誕生したので、横綱の特集をするのだと教えてもらいました。でも、現役の人が使っているまわしは、毎日使用しているものだから展示することはできないのだそうです。現役のお相撲さんのまわしを見るには、生でお相撲を見るしかなさそうですね。

今まで知らなかったお相撲の世界のことを知ることができたことのひとつに、行司にも階級があるということ。行司の場合は、幕下よりも階級が下の人は裸足で土俵に上がるので、ひと目で違いがわかるのだそうですが、テレビ放送では幕下以下の放送はないので、私たちが目にする機会はほとんどないようです。

また、行司には停年があるので、土俵に立てるのは65歳まで。力士は力が衰えてきたら引退ですが、江戸時代まで遡ると60歳ぐらいまで現役をやっていた人がいたという記録があるというから驚きです。江戸時代の平均寿命は40歳前後ということですから、60歳はすごいです。

「最近では40超えても現役の人もいます。相撲はやはり力が衰えると負けてしまうので30歳から35歳ぐらいで大体の人は引退してしまうんですが、最近はアスリート自体の寿命が伸びてきているので、最近は相撲も伸びてきている傾向にあるようです」と土屋さん。

最近のお相撲の傾向としては、誰か飛び抜けてすごく人気のあるという人がいるわけではなく、自分はこの人を押すというような感じで楽しんでいる人が多いようです。○○推しという言葉はよく聞くけれど、相撲業界もやはり例外ではないようです。

館内を見まわしていると、嬉しそうにはしゃいでいる小さな男の子の姿が。

「白鵬大好き」というその子は、白鵬が負けた試合では悔しくて泣いてしまったそうです。パパとママとおばあちゃんに連れられて、横綱の手形に小さなおててを合わせている姿はカワイイを絵に描いたようでした。相撲ファンの年齢層は幅広いな、と改めて思いました。

相撲博物館の来場者の多くはお相撲を見に来た帰りに立ち寄る人が多いそうですが、最近は外国人観光客が少なくとも日に50名から 60名位、日によるともっといるかもしれないとのこと、昔と比べると増えているという実感だそうです。

「ここだけではなく、大相撲観戦の外国人のお客様が増えているんです。それはもう間違いなくて、本場所全体の3割くらいは外国人観光客じゃないかという状態なんです。ツアーとかで団体で来たりとかする方も多いですよ」と土屋さん。

興味深いものばっかりだった「相撲博物館」。気がつけば、またまた小腹も減ってきたような気がします。土屋さんにお礼を言って、次へ向かいます。

相撲博物館

東京都墨田区横網1-3-28(国技館1階)

TEL 03-3622-0366

開館時間・休館日 10:00-16:30(最終入館16:00)・土/日/祝(一部開館あり)/年末年始

※展示替など臨時で休館する場合があります。(東京本場所中は毎日開館)

入館料 無料(東京本場所中は大相撲の観覧券が必要)

http://www.sumo.or.jp/KokugikanSumoMuseum

金額など掲載の情報は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。

WRITER

ライター

この特集について

旅する東京ライフ

春が目を覚ましています。 桜咲く東京はゆらゆらと陽気さが漂っています。 こんなふわふわ気分で気持ち良い季節は、つい旅をしたくなるものです。 でも、なかなか休みは取れませんし近場でどこかないでしょうか。 伊豆? 日光? 信州? ちょ...

気になるコラム