野菜をきっかけに宮崎の生産者の想いを届ける八百屋 「VEGEO VEGECO 根津」

新鮮な宮崎野菜と「その背景」をお客さんに提供

下町の雰囲気が好きな私は、自宅近くということもあり、予定のない休日にふらりと谷根千界隈を散歩することもしばしば。抜けるような冬の青空に柔らかい日差し、本日もお散歩日和。根津駅を出てパワースポットでもある根津神社方面に向かいます。
人気のたい焼き屋さんや老舗の金太郎あめ屋さんに立ち寄りつつ歩いていると、真新しい暖簾の向こうに覗くカラフルな野菜や果物が私の足を止めました。老舗店が多い根津エリアの中でひときわ目を引くおしゃれな八百屋さん。今年1月、オープンしたばかりの「VEGEO VEGECO根津」で販売していたものは、フレッシュな宮崎野菜と「その野菜にまつわるストーリー」でした。
私がスーパーマーケットに行くとき、たいていは頭の中に今晩のメニューが浮かんでいてそれに必要な素材を購入します。確認するのは値段と品質のみ。八百屋「ベジオベジコ根津」との出会いは「野菜は新鮮で安ければいいじゃん」という私の価値観を見直すきっかけをくれました。

「生産過程まるごと味わってほしい」という想い

オープンして10日目の今日、8帖の小さな店舗には入れ替わり立ち代わりお客さんが来ては、宮崎産の杉箱に入った美しい野菜を吟味していきます。箱に添えられた説明書きには生産者、産地、栽培方法の下に一言コメントが。白ネギには「トロットロで自然な甘みがクセになります」、カラーピーマンには「ピーマンの色で変わる味の変化を楽しんで」と、野菜たちのキャラクターが添えられ、思わず一つひとつ読み込んでしまいました。
お客さんを出迎えるスタッフさんのトークに耳を傾けていると、「この人参を作った農家さんはね…」と野菜の説明ではなく生産者である農家さんの説明をする様子に驚かされました。「実はこの野菜を作った農家さん、アメリカでパイロットとして働いていた人なんですよ。今は宮崎で野菜を作ってる…地面と空、両方の世界を仕事にしてきたすごい人なんです」こんな小話にも興味をひかれます。

店長・杉本さんが語る「VEGEO VEGECO根津」からお客さんに伝えたいもの、それは「農家さんの想い」だそう。その野菜一つひとつがどのようなストーリーを経てお客さんの手に届くかを知ってもらいたいと言います。

「味覚って舌だけで味わうものじゃないと思うんです。例えばこのトマト、どんな環境でどんな人に育てられたかを知ることで、その野菜に愛着が出てくると思いませんか?『愛情をもらって穏やかな気候と豊かな土壌で育てられた』過程を知ることで美味しさが増すと思うんです」

利益よりも大切にしたい、宮崎野菜への熱い想い

熊本県出身の杉本さんは現在25歳。「一人一人丁寧に農家さんの想いを伝える場として根津に店舗を構えた」と言います。大学進学時に宮崎県に移住し、その気候の良さ、人の良さ、農産物の美味しさに感動し「卒業後は宮崎のために働きたい」と考えるようになったそうです。
杉本さんは学生として最後の年に、ベジオベジコ代表・平林さんより東京で新しい挑戦をするという話を受けました。それは「農家さんをもっとハッピーにするため」「生産者と消費者をつなぐため」の事業を展開するというもの。当時、同級生ながら先に宮崎から全国へ挑戦をしていた平林さん。その想いに強く惹かれ、「東京にいながら野菜を中心に宮崎の魅力を伝えたい」と入社を決意しました。
東京支部立ち上げのため2016年4月に上京し、初の店舗販売に向けて走り出しました。「会社を立ち上げた二人が常々言っている、「農業がかっこいい仕事だ」ということを知ってもらうために僕は根津から伝えていきたいです。宮崎の魅力と一緒に」と話す杉本さん。
一見して冷静で控え目な杉本さんの話の中には、前へ前へと夢の実現のための熱い意思を感じます。
産地直送野菜のネット販売サービスから始まり4年。渋谷エリアを中心にしたアプリ「VEGELY(べジリ―)」も昨年スタートさせました。「もっと消費者の近くに」という想いから、始まった根津での店舗販売。店内ではお客さんとスタッフとの会話が和やかに交わされていました。
「この野菜初めてみたわ、どんなレシピに合うかしら?」
お客さんからの疑問にも答えられるよう、自身の料理のレパートリーを増やす努力も怠らないという杉本さんは「逆にお客さんからお勧めレシピを提案されることもあるんですけどね」とはにかみます。

開店から1か月足らずで常連客も多数、その理由は…

「農家さんが一生懸命育てた野菜だから、それにふさわしい値段で購入してお店に並べています」の言葉通り、確かにベジオベジコ根津で取り扱う野菜たちは「安い」とはお世辞にも言えない金額設定。しかし早くも常連客が足を運び、根津の八百屋として定着を見せていました。それはなぜでしょうか。しばらく店内の様子を見ているとその理由が分かってきました。

「この人参、甘くて美味しかったよ」「それでしたら、こちらの野菜もいかがですか?同じ農家さんが作ったものなんですよ。この農家さんがまた面白い人でね…」
「パクチー苦手な娘が、ここのは食べてくれたわ」「この農家さんのパクチーは、パクチー初心者の方用に香りを抑えて作ってるものなんです」
「この間おすすめされた新玉ねぎ、コチュジャンとあえて韓国風サラダにしたら美味しかったわよ」「自宅で試してみたいです。レシピ、教えてもらってもいいですか?」

開店して1か月もしないうちに、早くも「野菜」にファンがついている様子。今後はiPadを使って野菜や産地、農家さんの話をしていきたい、と話す杉本さんをはじめ、スタッフの面々は宮崎野菜に負けず劣らずのみずみずしい笑顔と野菜への愛情にあふれていました。野菜だけでなく、スタッフにファンがつく日もそう遠くない、と確信しました。

「食」に安全を求める時代だからこそ選んでほしい、こだわりの野菜

店舗に置かれている商品のほとんどが農薬をできるだけ使わないで栽培された野菜や果物たち。それらを求めてご近所さんはもちろん、遠方からのお客さんも多いんだとか。子どもができてから食への意識が変わったというお母さんたちが「子どもに食べさせるものはなるべくナチュラルなものを」という想いから定期的に足を運んでくれるそうです。

「今は早く宮崎に帰りたいと思っています。根津での店舗販売に期待してくれた農家さん、応援してくれた農家さんに、お客さんの反応を直接伝えに行きたいんです」
杉本さんは、農家さんの想いをお客さんにつなぐ架け橋としての仕事のやりがいと今後の展開に期待を寄せます。

散歩のお供に。スムージーや緑茶のテイクアウトも

「VEGEO VEGECO根津」ではスムージーや緑茶のテイクアウト販売も行っています。私もミカン、ショウガ、ニンジン、パプリカのフレッシュスムージーをいただきました。人参の甘味とショウガのさっぱりとした香りが際立ち、まるでフルーツジュースのような美味しさ。お腹の中から健康になりそうな一杯でした。

根津界隈の立ち寄りスポットとして、今後は私も常連客化する予感…。スムージー片手に散策を楽しみ、帰宅前に野菜を買いに再訪。この野菜を使って今晩は何を作ろう、と野菜が主役の食卓作りもいいですね。

野菜の背景にあるストーリーと農家さんの想いを知って作る一皿は、食卓でもきっと話題の一つになってくれるはず。ベジコベジオが紡ぐ生産者のストーリーは、お客さんの手によってさらに拡散していくことでしょう。

VEGEO VEGECO 根津

東京都文京区根津1-26-5-103
TEL.03-3827-4831
営業時間・定休日/11:00〜19:00 月曜日定休
編集・ライター

茨城県生まれ。旅行、スイーツ、下町大好き。きっちり計画立てるより、無計画でのサバイバル感に惹かれます。日焼けしやすく戻りにくい。最近始めたランニングによるくつ下焼けがほんのり自慢。

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