もっと自由でいい。「品品」の景色盆栽を通して感じる盆栽の魅力

若い女性からの支持が上昇中である「品品」の盆栽

私には盆栽いじりが趣味の友達がいます。まだ20代後半の彼女ですが、「可愛がれば可愛がるほど応えてくれる」と、旅行先にもその盆栽を持っていくほど。まだまだ手のひらサイズの盆栽は南部鉄器の器にすっぽりと収まり、北欧ヴィンテージテイストの彼女の部屋にもしっくりとなじんでいます。

 

みなさん「盆栽」と聞くとどんな印象を持つでしょう。「なんだか地味」「おじいちゃんの趣味」……こんな意見が多いのではないでしょうか。まもなく三十路に足を踏み入れる私もそんな印象を持つ一人でした。しかしその苔を取集しているその友人の存在が、私に「苔」と「盆栽」の世界に興味を持たせてくれました。

その盆栽好きの友人に「自由が丘の閑静な住宅地に面白い盆栽店がある」と聞き、取材に伺うことに。そこで出会った盆栽たちはこれまでの盆栽のイメージを一蹴。盆栽のお固い印象をガラッと変えてくれました。盆栽初心者の私が、盆栽専門店「品品」を訪れて感じた盆栽の奥深さや、新しい盆栽の形をご紹介します。

景色盆栽を提案する「品品」へ

今回訪れたのは東京・自由が丘にある盆栽専門店、「品品」。「景色盆栽」という聞きなれない盆栽のスタイルを提案するこちらのお店は、スイーツ店やおしゃれなお店が立ち並ぶ街、自由が丘にあります。賑やかな通りを少し外れ、閑静な住宅街の中に入ると、気づかずに通り過ぎてしまいそうなほど景色の中に溶け込んだ「品品」に到着しました。

なんかだか盆栽とは結びつかないようなおしゃれな看板。しかし確かに、お店の前にはたくさんの木々が並んでいます。

 

木々の間を通り抜け店内に入ると、店内にはおしゃれな器や目を引く形の可愛らしい盆栽がたくさん並んでいました。

 

ハリネズミの形の苔や、ガラスの器に入れられた植物はどれもおしゃれで可愛らしく、洋室に置いてあっても違和感がなくしっくりとお部屋に馴染みそう。木の板や柄布の上に置くといったディスプレイも秀逸で、それぞれの盆栽の魅力を引き出すように工夫されていました。

店長・小林さんの盆栽への思い

こちらの物腰が柔らかく穏やかな笑顔の方は、品品の店長である小林健二さん。
若い頃、アメリカ・オレゴン州のポートランドに住んでいた小林さんは、現地で一つの盆栽を愛でる外国人の方に出会ったといいます。その方は、細やかな作法や心豊かさを持つ日本人の“心”が好きで、その精神から生まれた盆栽に心動かされたようです。そのたった一つの盆栽の為に友達を呼び、皆で「この盆栽はここが美しい」「この部分が素敵」などと言いながらお茶やお菓子を楽しむホームパーティーを開いていたのだそう。まさに、日本文化と海外の文化が融合したような盆栽パーティーに感銘を受け、「本来の盆栽のあるべき姿や、自分の住んでいる国の文化を追求したくなった」と話してくれました。

 

品品が提案する「景色盆栽」とは、毎日の生活の景色の一部になるような盆栽。今までの「盆栽」のお固いイメージをガラリと変えて、若い方にも取り入れやすいように、そして日常の生活の中に取り入れやすいように器や見た目を工夫するなどアレンジを加えています。
 

インテリアショップなどで、ソファやテーブルといったディスプレイの一角におしゃれな盆栽が飾ってあるのを目にしたことはありませんか?それこそが小林さんが始めた「景色盆栽」を体現したインテリアスタイル。

本来ならば庭に置いて水をあげながら、というようにアウトドアで楽しむものをインドアでも楽しめるようにし、和や洋といったスタイルにこだわらない自由なスタイルこそが、景色盆栽の魅力なのだそうです。

「盆栽はどんどんさわってあげてほしいですね。そのほうが盆栽にとっても、いい刺激になるんです。」と言って盆栽の枝をグイっと曲げる小林さん。本来自然物として外にある盆栽は、雨風に晒されて毎日刺激を受けています。その刺激は、植物がより力強く生きる手伝いをしてくれているのだそう。盆栽初心者の私は、「そんなにさわってもいいの!?」と目から鱗でした。枝を折らないように気をつけながら、コニュニケーションを取るように触れてあげるのがコツ!

「盆栽はもっと自由で身軽に楽しめばいいんです」という小林さんの言葉に、私の中にあった盆栽のとっつきにくい印象がすっかり取れたような気がします。

一見ジメッとしていて地味な「苔」の魅力

 

「世界最小の緑」ともいわれている苔の盆栽も多くありました。驚いたのは、苔の吸収力。写真の手前が水をたっぷり吸収した苔で、奥は乾燥した苔です。持ち上げてみるとその重さの違いに驚きました!押してみるとスポンジのように水が溢れ出てきます。

「水を吸収しなくなった苔は、少し揉んであげると吸収力が復活しますよ」とのこと。

 

水のきれいなところにしか生えないという苔は、ろ過器と同じ役割をしてくれるのだそう。お部屋に苔の盆栽が一つあるだけで、お部屋の空気もきれいにしてくれます。なんだか一気に苔が身近に感じました。

可愛らしくこだわりのある盆栽の数々

器も魅力的なものがたくさんありました。こちらは、富山県高岡市の伝統工芸を使用したハリネズミの盆栽。ハリネズミの背中に青々とした苔が生えた盆栽はちんまりと可愛らしく、どんなお部屋にも合いそうです。

こちらは苔盆栽とテラリウムを組み合わせた「コケテラリウム」。一度水をあげて蓋をしておくと、何カ月もその水で成長していくのだそうです。2か月前に水をあげて以来水やりをしていないという器の中には、まだしっとりと水滴がついていて苔も青々としていました。

 

盆栽のいいところは、春夏秋冬それぞれのお手入れがあるところ。例えば、成長期である春は枝の剪定作業、秋は冬を越すための体力づくりなど、季節ごとに手をかけてあげる箇所が異なります。それこそが、観葉植物と違う部分だと小林さんは言います。「手をかければかけるほど魅力的になっていく」盆栽は、植物の良さや日本の四季の移ろいをじっくりと味わえる、本当に素敵なツールだと感じました。

四季を感じる「盆栽」は、本来は若い人にこそ楽しんでほしい趣味

品品では盆栽の教室を行なっています。生徒さんは女性の方が7割を占め、20代後半〜40代の女性がほとんどだそうです。
 

いくら簡単とはいっても、せっかくの盆栽を枯らしてしまったらどうしよう…と不安にもなります。

「失敗はぜひしてください。植物は尊いものという感覚も素敵ですけど、植物の扱いを知るためにも、そこは植物に甘えてしまってもいいと思うんです」とアドバイスを頂きました。確かに、子育て前の私たち世代が植物の扱い方を知ることで、いつか生まれてくる自分の子どもたちにも命の尊さや植物の魅力をしっかり伝えていくことができますね。

 
小林さんの「本来、盆栽は若い人の趣味であってほしいんです。盆栽の世界ではあと何回季節を感じられる、と捉えますからね。そういう意味では高齢の方よりも20~30代の人たちの方が長く楽しめる趣味といえます」という言葉には納得。盆栽に訪れる春があと何回、冬もあと何回と考えると、その一回一回の季節をとても大切にしたくなりました。まだまだ巡る季節の回数が多いハレット世代にこそ、その季節ごとの盆栽を感じてみて欲しいです。
今回「品品」を訪れて感じたのは、本来の盆栽の身軽さと、お手入れをしてこそ深まっていく奥深さ。始めこそ堅苦しい印象があった盆栽ですが、より気軽に、趣味やインテリアとして毎日の生活に取り入れられそうです。今回私がとても魅力的に感じたのは「苔盆栽」。一見地味で小さい苔盆栽ですが、水のきれいな場所にしかできないという苔は、お部屋の空気やどんよりとした気分もきれいに浄化してくれそう。お手入れも簡単で、忙しい毎日でもふと心を癒してくれるコケテラリウム……。早速今日から部屋に飾ってみようかな。

盆栽専門店「品品」

住所/東京都世田谷区奥沢2-35-13
TEL/03-3725-0303
営業時間/10:00~19:00
定休日/水曜

http://www.sinajina.com/

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