「落語」が教えてくれた古き良き時代の日常。

みなさんこんにちは。ハレット編集部 杉本です。突然ですが、

「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを」

小野小町『古今和歌集』より

という和歌を知っていますか?

意味は【あの人のことを思いながら眠りについたから夢に出てきたのであろうか。夢と知っていたなら目を覚まさなかったものを】。

実はこれ、いま話題となっている映画「君の名は。」(新海誠監督)のモチーフとなった和歌なんです。小野小町が古今和歌集で歌ったこの和歌からインスピレーションを受け、あの作品が生まれました。

今の時代の形に変換するということ。

 

『古今和歌集』からストーリーを作った?
『小野小町』って昔習ったけど何をした人だっけ?
このエピソードを聞いた時にそんな風に思った人もいるのでは。でも映画を観てみると、全く知識はなかったとしても

「昔から伝わることを、今の時代の形に変換し発信することで、世の中で称賛される作品となっている。」

ということに凄く驚き、そして純粋に凄いと思いました。

そして最近、同じように
「昔から当たり前にあるものを今の時代の形に変換し、世の中に発信しているスポット」に出逢いました。

 ハレット編集部が出会った新しい渋谷。

 

それが渋谷にある「渋谷らくご」という、場所。
そこは江戸時代からある「落語」という伝統的な日本の文化を、「若い人」「初めての人」にも楽しめるように、わかりやすく変換された場所でした。
アクセスが良く、行くことに対するハードルが低い「渋谷」という場所で、仕事帰りでも行けるよう、20:00から始まる落語会。「最近また流行っているらしいけれど、どこに行けばいいかわからなかった」落語に対して、一番最初にここへ行ってみようかな、と思えるカジュアルな場所でした。

中に入ると驚くのが、並んでいるのは若い人ばかり。そして一人できている女性が多いこと。

最近では「ひとりで映画に行くこと」が普通になってきていますが、そんな風にひとりで映画を観にくるような感覚で皆さん並んでいるんです。

そして、渋谷らくごが行われるユーロスペースは本当に「映画館」の中で落語を行っていたのです(!)

非日常の体験が詰まっている。

訪れていた女性の方にお話を伺ってみると

「落語の魅力は15~30分の間に、笑うだけではなく、感動したり、昔の文化や風習を知ることができたり、普段の生活にはない、非日常の体験ができることです。まるで舞台を見ているよう。
そして噺家(はなしか)さんが、汗だくになりながら話している姿が本当にかっこいいです。」

と次々と言葉が溢れてきて、本当に落語が好きな様子が伝わってきました。

「非日常の体験」ができるおでかけ情報を日々届けているハレット。
まさか、この場所でこの言葉が聞けるとは思いませんでした。

 

落語はメディア。

実は落語って、江戸時代のテレビやラジオの役割を果たすものだと知っていますか??

その町で起きた出来事を噺家と呼ばれる落語家が、おもしろおかしく伝えていたのが落語のはじまりなのだとか。その頃、自分の町のニュースを知るには「銭湯へ行く」か、「床屋へ行く」か、「落語をきく」ことしかなかったのだそう。

落語は情報を知るための「メディア」だったのです。

今日SNS等のメディアが当たり前のように日常生活の中で使われ、遠い場所にいる人の状況が手に取るようにわかりますが、昔は「どこで」「なにが」「どのように」起こったかの情報を得る、大切な手段が落語だったということがわかりますね。

 

落語で味わう「声を出して笑う」心地よさ。

江戸時代の文化や、その時代の言葉などわからないかも・・
我々もそう思ってこの場所を訪れましたが、落語は、本題のお話の前に、「マクラ」と呼ばれる導入があるおかげで本題がとてもわかりやすく聞くことができるんです。

マクラは、本題に関連する話題で聞いている人の関心を惹きつけるとともにリラックスさせ、そして本題でのわかりにくい昔の言葉や文化を簡単に説明することで、予備知識を聞く人に与えてくれます。

そして本題へ入ると、思わず笑ってしまうタイミングが止めどなくあり、客席にいる全く知らない人達と声を出して笑ってしまう体験が度々訪れます。

映画を観に行った時って、なんとなくポップコーンが食べづらかったり、笑うのを我慢したり、隣の人が気になったり・・だけど思わず吹き出してしまう瞬間が重なる時って共感しくれる人がいたようでなんだか嬉しかったり。そんな経験ってありませんか?

常に声を出して笑い続ける落語会の2時間はそんな瞬間がずっと続いている感覚でした。

時代の転換点としての「渋谷らくご」。

「いつかこの場所がなくなることが夢。」
そう語るのは渋谷らくごのキュレーターを務めるサンキュータツオさん。「初心者向けの会がなくちゃいけないという今の状態がなくなること、落語に興味を持ってくれた人が1歩踏み出せば来れる場所を作ることができれば、渋谷らくごはいつかなくなるはず。時代の転換点として今存在していればいいのかな思います。」

親近感を感じる工夫。

渋谷らくごは噺家が若いのも魅力のひとつ。それぞれの個性がではじめる30歳前後の噺家は、一気に親近感がわき、お話にのめり込んでしまいます。

そして、渋谷らくごでは情報発信をすべてtwitterで行っています。若い人に届くツールを使い、若い人が集まりやすい場所で行う。「良いもの」ってちょっとの変換や工夫をするだけであっというまに浸透され、拡散されていくんですね。

会場の壁一面にはられたツイートの数々は、渋谷らくごの広まりを感じることができます。

知っているようで知らないこと。

2時間の落語会は本当にあっという間で、自分の知らなかった世界がよく訪れる「渋谷」の中にあったことに気づきました。

「えー、昔はそんなことがあったの?」
と言われるような、いわゆる「日本の文化や日常」をいま知る場所は他に一体どこにあるだろう?

落語は「日常」あたりまえにあったことを伝えてくれます。
その「噺」を聞くだけで当時の人たちとつながれる気がするし、過去のはなしをきいて今でも笑ったりできます。

そんな守るべき日本文化の一つであるがあまり日の当たってこなかった「落語」。

身近なところで日本の文化を体験できる場所があったり、気になったことはその日にでも挑戦できるのが東京のいいところ。でもそれに甘えてなかなか踏み出せていないことも、頭の中にはたくさんありますよね。

自分の語れる街、文化

わたしたちは娯楽に恵まれた東京にいるから、他に楽しいことはたくさんあるけれど、「映画」ではなくあえて「落語」に行く、ということは、これからの東京人の”かっこよさ”かもしれません。

これからもっと世界からの関心も高まる都市、東京。「自分の語れる街、文化」をもっと増やしていけたら素敵な気がします♪

こんな風に、「良いもの」をそのまま伝えるのではなくどうしたら伝わるか変換して発信されている「渋谷らくご」さん。昔のお話を現代の人に伝わるマクラとして本題に入りやすく変換している噺家さんたちのおかげで、素敵な世界を知ることができました。

観にくる人、聞きにくる人がいなければ、文化が廃れてしまいます。しかもそれが流行のような一過性で終わらないように、「あたりまえ」の存在にしていきませんか?

渋谷らくご

渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F
渋谷駅下車、Bunkamura前交差点左折 ユーロスペース内2F
TEL 03-3461-0211
毎月第二金曜日から5日間連続10講演開催。詳しくはHPをご覧ください。
当日券 大人2,500円/学生1,900円/高校生・落研1,200円/会員2,200円
前売券 大人2,300円/学生1,700円/高校生・落研1,000円/会員2,000円
編集/ライター

鳥取県生まれ、横浜育ち。暇さえあれば、旅行へ行きたい。おなかが空いたら、お肉で胃を満たしたい。好きなことは、ドライブ、牧場、カフェ、目覚ましをかけずに寝ること。

友だちのはなし

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